pick up

温かいのはお湯だけではありません
銭湯がつなぎ、地域住民がはぐくむ
コミュニティスペース

「昭和湯」は、阪急淡路駅から徒歩3分。
昭和3年創業以来、地域で暮らす人たちに愛されてきた銭湯です。
そのわずか数十メートル先で、「ゲストハウス木雲」の営業をはじめたのは、「昭和湯」の4代目当主、森川晃夫さんと弟の真嗣さん。
宿泊客は何度でも銭湯を利用できるというこのゲストハウスには、誰でも気軽に立ち寄れるカフェも併設。
昔ながらの銭湯文化を味わいつつ、地元住民とのふれあいも楽しんでほしいと願う森川さんの、ユニークな取り組みについてお話を伺いました。

日本で唯一!?

“銭湯付きゲストハウス”が誕生

下町情緒が残る淡路商店街の少しはずれに佇む「昭和湯」。その名前通り、昔ながらの下駄箱に番台、そして壁のタイルもどこか懐かしい昭和の雰囲気です。浴室内にはラドン湯、電気風呂、泡ぶろなど7種類のお風呂があり、不定期で開催される「あひる風呂」などのイベント風呂も人気。そんな「昭和湯」は、地元住民の憩いの場として、愛され続けています。

しかし、日本一銭湯が多いと言われている大阪でも、府内の銭湯は、昭和43年の2358軒をピークに年々減少し続けていて、2016年6月時点で478件。その現状に危機感を感じた森川さん兄弟が、ちょうど空き家になった長屋を利用し、ゲストハウスをオープンすることを思いつきました。「銭湯は年間50件ずつ消えています。新規出店はずーっとゼロ。その中では東淀川区は生き残っているほうだと思います。うちのような「銭湯付ゲストハウス」っていうのは日本初だと思いますよ」と穏やかな笑みを浮かべながら話すのは、「ゲストハウス木雲」を運営する弟の真嗣さん。お風呂は外で入ってきてください、というゲストハウスは数あれど、「銭湯付きゲストハウス」はかなり異色。「宿泊料は一番安くて3500円ですが銭湯料金が含まれているので、しんどい面はあります(笑)」と真嗣さんが話すように、「ゲストハウス木雲」の魅力は、宿泊客はお風呂が何度でも利用できること。

「昭和湯」は銭湯では珍しく、シャンプー・リンス・ボディソープが備え付けなので手ぶらで行けるのもうれしい限り。また、敷地内に飲食スペースを併設し、お風呂上りはそこで一杯やることもできます。食事は、近くの商店街へ。地元で愛される、地元民しか知らないお店、一見さんでは 入りづらいお店、コストパフォーマンスのよいお店を、手作りの商店街MAPで案内しています。

地域や商店街も巻き込んで
みんなでつくった銭湯付きゲストハウス

地元で愛されてきた銭湯だけに、森川さん兄弟や社長である父森川正さんが街を歩けば、たくさんの人に声をかけられます。「僕らより、今内装を手伝ってくれているヤマグチさんのほうがすごくて、歩いていると、お菓子と缶コーヒーとかいろんなものが集まってくるんです」と真嗣さん。界隈には、森川さんやヤマグチさんのように、毎朝掃除をしていたり自転車の整備をしたり、地域のお困りごとを解決する、世話役のような方が何人かいらっしゃると言います。

ゲストハウス木雲」も、併設の飲食スペース「コミュニティキッチンmogumogu」も、森川さん兄弟とその友人、そして地域住民の方たちが一から作り上げたもの。壁の塗り替えや、立派なヒノキのベッドなどの家具も手作りです。「昨年10月からようやく取り掛かり、半年くらいかかりました。ほとんどの人がこれを機会に集まった人たち。改装ばかりだとしんどいので、途中でイベントをやったりしながら、50~60人くらいの人がかかわっていると思います。その期間につながりができて、面白かったですね」。

「ゲストハウス木雲」に併設するコミュニティキッチン「mogumogu」の内装に使っているものも、ほとんどもらいもの。黒電話や欄間、足踏みミシンなど、昭和の香りがただよう懐かしいものが集まりました。「古いものをお持ちでもどうしていいかわからなかったりするみたいで、それならうまい事つかおうや、と。ものがあふれて困る部分もあるんですが…ちなみにカフェの2階はまだ改装中。ぼちぼちやります(笑)」。

コミュニティキッチンmogumoguを
地域の人と人がつながれる場所に

コミュニティキッチンmogumogu」は、コーヒーやお酒などのドリンクが注文でき、商店街の食べ物を買って持ち込んで食べてもOK。お風呂上がりの一杯がてら、旅の疲れをいやしながら、地元の人たちと交流する事ができます。

木曜日だけは、「mokumokuカフェ」を開催しています。営業は午後2時~9時まで。夕方になるとご近所の高齢者の方々がおしゃべりをしに集まってきます。「おかげざまで敬老会のイベントの看板を作ってとか、いろんなオーダーが来ます(笑)。そのかわりコップが足りなかったら『これ使い~』と持ってきてくれたり。そういうもちつもたれつの関係ですね」。「mokumokuカフェ」には高齢者の方が集まりますが、今はまだ、夕方くらいに来られて、晩御飯には帰られるのが現状。

そんな中、今、真嗣さんが考えているのは、地域の人が楽しくご飯を食べてもらえる場所として使ってもらうこと。「たとえば商店街には「二代目ぼん太」というお店がありますが、うちのメニュー表の「二代目ぼん太」を注文するとお好み焼きが食べられるというシステムを考え中です。今もそれに近いことをしていて、焼鳥屋さんが出前に来てくれています。あと個人的には、王将が2件あるので “京都王将と大阪王将の食べ比べセット”とかも面白いかも(笑)」。特別ではない日に「外にご飯を食べに行く」のは気が引けるという高齢者の方は多いことでしょう。でも、森川さんの取り組みは、もっと気軽に、もっと日常的に「ご飯行こか」と誘い合えるきっかけになるかもしれません。

「ゲストハウス木雲」は、木に雲と書いて「木雲」。ここに込められているのは、風呂屋の煙突が醸す温かさ、木材や植物のにおい、そして、人が集う囲炉裏の熱気。これからも、みんなでつくり続けたいという思いが立ち込めています。「昔から根付いている既存のコミュニティと、これから新しく作ろうとしているコミュニティ。そこがうまく交わっていけばいいなと思っています」。

other pick up

  • 美味しいからはじまる身体への気づき。地域の健康文化を育む第一歩。ヘルシーカフェ プティ・オスピタリテ

    医誠会病院が監修する「プティ・オスピタリテ」は、「新しい健康文化の発信基地」として2014年に誕生したヘルシーカフェ。

    detail
  • 地域の高齢化と、ママの働く場所を考え、まちを楽しくすることに全力で取り組む、まちのキーパーソン」のこれから

    東淀川区に本社を構えるリフォーム・福祉用具レンタル販売会社
    「株式会社ソレイユ」の代表取締役、

    detail
  • 温かいのはお湯だけではありません銭湯がつなぎ、地域住民がはぐくむコミュニティスペース

    「昭和湯」は、阪急淡路駅から徒歩3分。昭和3年創業以来、地域で暮らす人たちに愛されてきた銭湯です。そのわずか数十メートル先で、

    detail

PAGE TOP